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最高裁判所第一小法廷 昭和24年(れ)580号 判決 1949年8月25日

主文

本件上告を棄却する。

理由

弁護人福井正二上告趣意について。

しかし、原判決において所論知情の点を認定したのは、論旨摘録にかかる(イ)乃至(二)の情況証拠のみによったものでなく、原判決挙示の証拠、殊に被告人の原審公判廷における供述(特に「当時世間には硝子窃盗の多いことは承知して居りました」との部分参照)及び被告人に対する檢察事務官の聽取書中の供述記載(特に「私は買受け当時右硝子は絶体正しいものだとの確信の下に買取ったものでなく、商賣柄或はどうかしたものではないかと怪しまずには居れませんでしたが、新築した家に硝子を入れることをあせっていたので買取ったものであって買うとき怪しみながら不安のうちに買ったのは事実であります」との部分参照)を綜合して認定したものであることが明らかである。この原審の綜合認定はその根拠とされた証拠に照らしこれを肯認するに難くないのであり、所論のように経験則に背反するものとは認められないのである。所論の「現在学校等デ盗難予防ノタメ頭文字等を硝子ニ記入スルコトハ普通デアルガ個人ノ家デハソンナ事例ガナイ」というが如きことは現時わが日常生活における実驗則に外ならないのであって、裁判所はこれを裁判の基礎となすことを得るものであり、もとよりその存在につき証拠説明をなす必要はないのである。

されば原判決には所論のような違法はなく論旨は結局独自の見地に立って事実審である原審がその裁量権の範囲において適法になした事実認定を非難するに歸着し採用の限りでない。

よって旧刑訴四四六條に從い主文のとおり判決する。

この判決は裁判官全員の一致した意見である。

(裁判長裁判官 岩松三郎 裁判官 沢田竹治郎 裁判官 真野 毅 裁判官 斎藤悠輔)

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